軽度の知的障害があるお子さんの就学先として、通常学級(普通学級)と特別支援学級のどちらを選択するかはたいへん難しい問題です。
文部科学省のHPには、知的障害特別支援学級の対象となる知的障害者の障害の程度について、以下のように書かれています。
営むのに一部援助が必要で,社会生活への適応が困難である程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)
このうち「知的発達の遅滞」は、IQ(知能指数)で把握できます。
IQの数値だけで通常学級か特別支援学級かが決まるわけではありませんが、通常学級に入るにはどのくらいのIQが必要なのかは、気になるところでしょう。
就学先として特別支援学級を選択肢に入れている場合、就学相談を経て、就学先が決まるので、
ここでは、就学相談で”通常学級”と判定する目安となるIQの数値を探ります。
※この記事は、軽度知的障害があるお子さんの就学先として、通常学級+特別支援教室もしくは特別支援学級の知的障害学級を検討されている保護者の方向けに書いています。
そもそもIQとは?
IQはIntelligence Quotientの略。日本語では知能指数といい、次の式で求められます。
IQ=知能検査(発達検査)で測定された精神年齢/生活年齢(暦年齢)×100
例えば、精神年齢が3.0で生活年齢が4.0なら、3/4×100=75なので、IQ75です。
数値が高いほど知能が高いといえます。
通常学級に必要なIQは?
結論から言うと、特に決まっていません。IQだけで、お子さんの就学先を決められないからです。
ただし、目安となるIQはあるようです。
私の住んでいる市町村は、IQ75を目安にしているそうです。この市町村では、原則として就学相談時に田中ビネーVの発達検査を行い、その結果を就学先の判断材料としています。
また、東京都の立川市では特別支援学級ではなく、通常学級に通いながら特別支援教室を利用するお子さんの目安として、
としています。
WISC-ⅣはIQのほか、言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標が産出されます。これらすべてが75以上を上回るお子さんを特別支援教室の対象としているということですので、やはりIQ75をひとつの目安としていることがわかります。
いっぽう、東京都の練馬区はIQ70が目安のようです(「練馬区における就学相談手続きの見直し(案)について」)。
同じ東京都でも、自治体によって数値が異なっています。どうやら、通常学級に必要なIQは、市町村が独自に設定しているみたいです。
IQはセンシティブな数値であり、またIQだけで就学先を決められないなどの理由から、具体的な数値をホームページに掲載している市町村は多くありません。どうしても気になるということであれば、お住まいの市町村の教育委員会や、就学相談のときに担当者に聞いてみましょう。
さいごに
IQの数値は、あくまで目安にすぎません。IQがやや低くても通常学級+特別支援教室に通うお子さんもいれば、IQが80以上あっても特別支援学級が合うお子さんもいます。
IQにとらわれず、お子さんの能力や特性を見極めて、最適な環境を選択しましょう。